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「削らない歯学会」設立趣意書

我が国の歯科医療特に「う蝕」に関しては、「MI」の概念が提示されて以来大きな変化は見られないようであり、これは我が国に限った話ではなく、世界的に見ても事情は大きくは変わらないようである。


しかるに歯科材料の進歩は着実であり、「MI」を超えた「無切削」にも対応できる可能性のあるものも出現してきた。本会はこれを踏まえ、「可能な限り歯牙を切削しない治療法」の確立を目指すものである。

歯牙の切削を伴わない治療としては、開発途上国に対する先進国の援助の一環として、グラスアイオノマーセメントを用いたいわばう蝕封入療法とも呼べるものがあり、長く行われてきているが、これによってう蝕が急激に悪化したという事実は認められず、良好な成績を収めている。


これは現地の状態から切削が不可能であるためやむを得ず無切削による充填が行われたといういきさつがあるが、少なくともう蝕の悪化は認められなかった点には着目すべきであろう。


我々歯科医療人の手による歯髄の除去すなわち抜髄が、それ以降に引き起こされる歯牙の破折などによりどれだけ歯牙の寿命を縮めているかを考えなければならない時期に来ていると考える。


事実自身の臨床においても、抜髄対象歯において、う蝕封入療法の採用後15年以上にわたり1症例も抜髄を行わずに過ごしてきている。
もちろんそのまま歯牙が失活してしまうこともあるが、大した痛みも伴わず、場合によってはほとんど無痛で失活することもあり、その比率はおおむね5パーセントほどである。(5年経過のおおまかなデータであるが)これらを考えあわせると、従来言われてきた抜髄に関する基準を再考する時期に来ているのではないかと考え本会の設立に至った。
なお、従来からのう蝕治療に対する考え方を否定するものではなく、あくまでも選択肢の一つと考えていることはもちろんである。

川崎市開業(聖母歯科医院) 豊山 洋輔

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